COM(こむ)について

COMの成り立ち

今から25年前、2歳の重度自閉症の子どもの子育ては大変でした。

周りの理解も少なく、支援する場所も人も乏しく、措置制度の中で施設に入所又は短期入所で預かってもらうか、お金を出してインフォーマルサービスに子どもを預ける以外、親は必然的に子どもから目を離すことができず、多くのことを悩みながらも子どもと向き合い続けてきました。

皆さんはすべての子どもが学校に行くことができるようになったのがわずか40数年前ということをご存知でしょうか?
それまでは「就学猶予」と言う名のもとに養護学校にも行けない子どもがいました。やっとすべての子どもが学校に行くことができるようになっても学校卒業後の生活は依然として行き場のない厳しいものでした。親達は学校を卒業することは崖から突き落とされるような不安な気持を持っていました。

先人の親達が互いに悩みを共有し力を合わせて作業所を作る動きがあちこちで始まり、福祉が動き始めたそのような時代の中で私の息子は成長しました。私も”この子を残して安心して死ねるか?””求めるものを作りたい”という思いがCOMを立ち上げた原動力になっています。

”COM”は”共に”という意味です。英語の接頭語"com"のつく言葉にはcommune(語り合う・共感する)comfort(なぐさめ力づける)common(共通の)companion(友人・仲間)などがあります。

言語聴覚士として小さい子どもの療育をしていた時は、”この時”と”この場”を共有し一緒に遊んだり、一緒に何かを達成する中で”共感する”ということ、そして”communication(コミュニケーション)の力を育む”ことを大切にしていました。

一人ではなく仲間と一緒に喜びや悲しみを分かち合いながら私も息子も生きていきたい、力を合わせ課題を乗り越えていくことが、障害をもつ人たち、そして家族の大きな喜びにつながることを信じて”COM”と名付けました。

今は「community」(コミュニティ・地域)の中で一人の人として、”そこにいていい””そこで働いて”、”そこで安心して暮す”ことができるよう、障害のある人が与えられるだけの人生ではなく、他の人と同じように当たり前のことを選ぶ権利と自由があり、その人らしく、主体的に自分の人生を紡いでいくことができるようお手伝いをしたいと思っています。

吉澤 佳子

COMの理念

共に生きる

一人ではなく誰かと一緒に喜びや悲しみを分かち合いながら歩むことができること、その人にとって一人ではできないことも、思いや力を合わせること、手伝ってもらうことを受け入れ、自分の役割を担っていくこと、そうした共感や共働体験の積み重ねが大きな喜びや豊かな人としての成長につながると考えます。

一人ひとりを大切に

誰もが安心して自分を表現すること、又理解してもらい人に受けとめてもらえることを望んでいます。
COMは一人ひとりの気持ちにていねいに寄り添いながらその人の成長を見守り、明るく健やかに自分の人生を歩んでいくことを支援します。

地域の中で

住み慣れた街で多くの人とふれあいながら、地域社会の一員として 共に働き、共に生きることができるよう、その拠点となっていきます。
自分の食べたい物や身に着けたいものを選ぶことすらできなかった時代から、誰もが人として当たり前のこととして、その人にできるかぎりの自己選択と豊かな暮らしを実現できるよう努力します。
誰もが皆、かけがえのない一人の人であり、それぞれが“支え、支えられている”ことに感謝し、自他ともに大切にできる社会に!

倫理綱領

私たちは障害のある人がそれぞれの豊かな人生を自己実現できるように共に支え歩んでいくことを自らの職務と自覚し、確固たる倫理観をもってその使命を果たさなければなりません。ここに倫理綱領を定め、私たちの規範とします。

1.生命の尊厳

私たちは障害のある人、一人一人をかけがえのない存在として大切にします。

2.個人の尊厳

私たちは障害のある人を一人の人間としてその個性、主体性、可能性を大切にします。

3.人権の擁護

私たちは障害のある人に対するいかなる差別、虐待、人権侵害も許さず人としての権利を擁護します。

4.社会への参加

私たちは障害のある人が年齢や障害の状態などに関係なく、地域の中で社会を構成する一員としてはたらき、できる限りの自己選択をし、自分の人生を生きることができるよう支援します。

5.専門的な支援

私たちは自らの専門的役割を使命と自覚し、絶えず研鑽を重ね、障害のある人一人一人が安心して充実した日々を送れるよう支援し続けます。